アクアポニックスは魚の排泄物を微生物によって野菜の栄養へと変換します。今回はその微生物群の一つ、窒素肥料を作り出す硝化細菌について解説していきます。
アクアポニックスに欠かせない硝化細菌のはたらき
魚に有毒なアンモニア
硝化作用を説明する前に、硝化の起点となるアンモニアについて解説します。水の中で暮らす魚はエサを食べると、魚のフンや尿、エラなどから老廃物であるアンモニアを排泄します。このとき、エサに含まれる窒素の約35%がアンモニアとして水に溶けだすと言われています。
水槽のような水が外へ排出されない、閉鎖された環境では水替えなどしなければ、アンモニアが水槽の中で徐々に蓄積していきます。アンモニアは魚にとって有毒な物質であるため、濃度が濃くなっていくと徐々に弱り死んでしまいます。
そこで、アクアポニックスではこの有毒なアンモニアを硝化作用という自然の仕組みを利用して、魚にとって毒性の低い物質に変えていきます。
硝化作用とは
アンモニアの毒性を下げる硝化作用は自然界に存在する微生物によって行われていきます。
まず、水に溶けたアンモニアはアンモニア酸化細菌によって亜硝酸という形に変換されます。亜硝酸も魚にとっては有毒で、魚の体内に入ると呼吸障害を引き起こすことがあり、いずれは死んでしまいます。
亜硝酸は次に亜硝酸酸化細菌によって硝酸という形に変換されます。硝酸は魚への毒性が弱い物質ですが、濃度が高くなれば魚に害を及ぼします。ところが自然界で見てみると、実は植物が吸収しやすい窒素肥料という形となっています。
上の図のようにアンモニアから亜硝酸、硝酸へと物質を変化させる微生物たちのことを硝化細菌と呼びます。
また、硝化細菌によって行われるこの仕組みを硝化作用と呼びます。
アクアポニックスでは魚の飼育で発生する有毒な副産物であるアンモニアを硝化作用によって硝酸に変換し、野菜の肥料として活用しているのです。
自然界で行われている窒素循環
ではここからは自然界で硝化作用がどのように行われているか解説していきます。
この図は自然界で窒素の循環の様子を表したものです。
動物の排泄物や死骸などの有機物から発生したアンモニアは、微生物による硝化作用によって亜硝酸や硝酸に変化し、植物が利用できるようになります。植物は根から硝酸を吸収し成長し、動物が育った植物を食べ、また排泄物や遺体となります。
このように自然界では食物連鎖によって窒素が形を変えて循環しています。これを窒素循環とよびます。
アクアポニックスではこの窒素循環の仕組みを利用して魚と野菜を一緒に育てているのです。
アクアポニックスの窒素循環
ではアクアポニックスのなかでどのように窒素が循環しているか見ていきましょう。
まず魚が餌を食べると排泄物から水中にアンモニアが発生します。アンモニアは培地に住む硝化細菌によって亜硝酸に変わり、そして硝酸へと変化します。硝酸へと変わった窒素は植物に吸収されるため、水が徐々に浄化されていきます。
このサイクルを繰り返すことで魚と野菜が成長していくのです。
この窒素循環はアクアポニックスをうまく稼働させるためには非常に大切な要素となりますので覚えておきましょう。
硝化作用のポイント
硝化には酸素が必要
まず、硝化作用のキーマンとなる硝化細菌は、酸素を利用してアンモニアの変換を行う微生物です。
このように酸素がある中で活動する微生物を好気性細菌と呼びます。
アクアポニックスでは硝化細菌だけでなく、魚や野菜も呼吸し酸素を消費するため水の中の酸素が不足しないよう気を付けなければなりません。硝化作用を効率的に行うためにも水の中に酸素がしっかりある状態を作ることが大切です。
酸素が少ないと脱窒してしまう
では酸素がないとどのようなことが起きるでしょうか。
酸素がない環境では、活動するために酸素を必要としない微生物がはたきます。このような微生物のことを嫌気性細菌と呼びます。嫌気性細菌の中でも脱窒菌と呼ばれる微生物群があり、脱窒菌が働くと硝酸や亜硝酸は気体にかわり、やがて大気中に放出されてしまいます。
アクアポニックスで考えると植物の肥料となる成分が放出されてしまうということです。このような理由からもアクアポニックスでは水の酸素が不足しないようにする必要があるのです。
まとめ
今回のまとめです。
1つ目、アンモニアは硝化作用により亜硝酸、硝酸へと変換される。
2つ目、硝酸は植物の栄養となり吸収され、水を浄化する。
3つ目、硝化細菌は好気性細菌、酸素がある環境で活動する。
これで硝化作用の解説は終わりです。
硝化はアクアポニックスの根幹をなす部分でもありますので、よく覚えておきましょう。
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