実際にアクアポニックスを始めたはいいものの、うまくいかないということはよくあります。うまく運用できない原因は色々ありますが、今回はよくある事例を紹介していきます。
アクアポニックスがうまくいかない13の原因
1. 低品質な水を使ってしまう
アクアポニックスに使用する水は魚や野菜に安全な水である必要があります。投入する水は次の水質パラメータを事前に確認しておくと安全です。
- PH
アクアポニックスではPHを6.5~7.0の範囲で管理していきます。利用する水のPHによっては、システムのPHを上下させてしまう可能性があり注意が必要です。水道水は中性(7.0前後)に調整されていますので、そのまま利用できます。
- 塩素
水道水を利用する場合には水に含まれる塩素に注意してください。塩素は魚に悪影響を及ぼすだけでなく、フィルター内の微生物も殺菌してしまいアクアポニックス全体に影響を与えてしまいます。水道水投入前にカルキ抜きなどして、必ず塩素を除去するようにしましょう。
- 水温
投入する水の水温はアクアポニックスの水温になるべく近い状態で加えるようにしましょう。水量によっては水温を大きく変化させてしまい、魚にストレスを与えてしまいます。
- 採水場所
水道水は特に問題はありませんが、例えば河川の水や井戸水を利用する際には注意が必要です。例えば河川の水には寄生虫や汚染、農薬散布直後の周辺の河川には同様の成分が残っている可能性があり、魚に悪影響を与える恐れがあります。井戸水は場所によっては塩分が含まれていたり、溶存酸素量が少ない場合などがあります。事前に水質を確認するようにしましょう。
2. 魚と野菜、微生物の比率を考慮しない
フィルターの性能より多くの魚を水槽に入れてしまうと魚にストレスを与えるだけでなく、魚に有毒なアンモニアが処理しきれず、養液内にアンモニアが蓄積し、魚に悪影響を与えてしまいます。逆に魚が少なすぎると野菜に必要な栄養が供給されず、野菜がうまく成長しません。アクアポニックスを作る際には事前に魚と野菜、微生物のバランスを計算して設備を設計しましょう。
3. 適切なメディアを使用しない
一般的なハイドロボールなどを利用している場合には問題ありませんが、水質を変化させるようなメディアや強度の弱いもの、比重が軽いものは、アクアポニックスには向きません。例えば石灰岩やサンゴ石などを利用すると水質がアルカリに傾きすぎてしまいます。軽石や日向石は崩れやすくアクアポニックスには向きません。
メディアの選び方についてはこちらの記事で紹介していますので参考にしてみてください。
4. PHを管理しない
魚と野菜、微生物にはそれぞれ適したPHがあります。アクアポニックスでは一般的には6.5~7.0の間で管理するようにします。PHが低すぎると魚にとって負担になりやすく、硝化細菌の硝化能力も下がります。一方PHが高くなると植物が吸収しにくい栄養がでてくるため生育に障害が発生します。適切なPHの管理はアクアポニックスを健全に保つために大切な要素です。
5. 季節や環境に合わない植物を育てる
たとえば夏の野菜を冬に育てたりするなど、季節に合わない野菜を育てようとするとうまくいきにくいです。またアクアポニックスの水温が野菜に合わない場合もあります。管理しているアクアポニックスの水温、季節に合わせた野菜を選択するようにしましょう。
6. 害虫駆除の準備をしていない
アクアポニックスでは基本的に魚や微生物に有害な農薬は使用できません。そのため設置する環境にあわせた害虫対策が必要になります。これは屋外のアクアポニックスだけでなく、室内に設置した栽培システムも同じです。特に室内のシステムは一度、害虫が増えると天敵がおらず快適な環境となるため日々の観察が大切です。
7. 充分な光がない
室内に設置したアクアポニックスによくあるのは、光が足りていないことです。たとえ窓際であっても1日にわずかな時間しか光が当たらなければ植物はよく育ちません。植物は光合成によって成長していきます。もし日当たりが悪い場合には、LEDなどライトを利用して光を補ってあげましょう。また室内でアクアポニックスをする場合には、日当たりが悪くても育ちやすい陰性植物を選ぶと育てやすいです。
8. 光の当たりやすい環境で透明な水槽を利用する
アクアポニックスの水は植物にとって栄養豊富な水を作り、植物を育てていきます。その栄養が含まれた水に光が当たると、自然に藻類が繁殖していき、次第に魚の様子が見えなくなる、配管を詰まらせるなどの悪影響を及ぼしていきます。屋内のアクアポニックスでも水槽には強い光が当たらないようにしましょう。
9. 餌の量を管理しない
アクアポニックスで植物がうまくいかない事例のよくある原因は、餌の管理をしていないこと。アクアポニックスでは魚の餌が最終的に植物の栄養へと変わります。餌を適切に管理しないということは植物の栄養を管理していないのと同じです。定期的な植物の観察、水質検査を通して日々の餌の量が適切か把握しましょう。
10. アンモニア、亜硝酸、硝酸の濃度を把握していない
アクアポニックスの水質パラメータで最も重要な管理項目がアンモニア、亜硝酸、硝酸です。魚から排出されるアンモニア、亜硝酸は魚にとって非常に危険な有毒物質でありますが、硝酸に変われば植物に利用されやすい窒素肥料となります。硝化作用が問題なく行われているか、硝酸の濃度は適切か把握するためにも定期的な水質検査が必要です。水質検査はアクアリウム用にテストキットが販売されているほか、イオンセンサーなども販売されています。イオンセンサーは高価であるため、テストキットの利用がオススメです。
11.溶存酸素不足
養液中の酸素不足は魚や野菜の成長のみならず、微生物のはたらきにも大きな影響を与えます。循環ポンプの水量を増やす、ブロアーを利用することによって溶存酸素が不足しないようにしましょう。
12.アクアポニックスに適した魚を利用しない
アクアポニックスは様々な魚で行えますが、向き不向きがあります。魚の性質だけでなく、選択した魚があなたの栽培設備環境にあっているか、よく検証するようにしましょう。
アクアポニックスの魚を選ぶポイントはこちらの記事で紹介していますので参考にしてみてください。
13.魚の餌の代わりにウキクサだけを使う
ウキクサは簡単に増やすことができ、魚にとっても栄養価が高くいい餌とされています。ウキクサであれば餌の自給自足ができると考える方もいるでしょう。しかしながら、ウキクサだけをアクアポニックスを運用するための餌にするのは少し危険です。なぜならウキクサは重量の95%が水であり、魚に必要なタンパク質の総量が不足する可能性があるからです。タンパク質は魚の体内で代謝されやがてアンモニアへと変わります。アンモニアは植物の栄養の元となる成分です。つまりウキクサを与えて魚を育てていても植物の栄養が不足する場合があるのです。またウキクサは栽培槽に侵入すると取り除くことが困難であり、別の問題を引き起こすことがあります。ウキクサは必ずしも万能な餌ではないと知っておきましょう。
“見た目だけアクアポニックス”を卒業しよう
アクアポニックスは見た目だけ整えてもうまくいかないことが多いです。しかし、基本的な知識を身につければ、形や大きさ、設置場所は自由自在です。実践する際にはこの記事で紹介したことだけでなくアクアポニックスの基礎知識も参考にしてみてください。
駐車場1台分のスペースから始められる“まちかどアクアポニックス”
アクアポニックスを自宅で始めたい、兼業農業を始めたい、新規事業として取り組みたい、教育にアクアポニックス取り入れたい、自給自足にー。
まちかどアクアポニックスは駐車場1台分、わずか10㎡の広さで野菜を1000株、魚を200匹飼育できる省スペース高効率栽培が可能なトータルシステムです。温室、水槽、栽培槽、フィルター、環境モニタリングシステムがオールインワンとなっています。
葉物野菜やハーブ、実をつける野菜など育てられる野菜は無数にあり、多品目の栽培も可能です。
詳しくはこちらからご覧ください。