生産性を高めるデカップルシステムのアクアポニックス

アクアポニックスは水槽⇒フィルター⇒栽培槽⇒水槽と水が循環する栽培システムの構成が多いですが、アクアポニックスの技術を応用したデカップル(ダブルループ)という栽培方法もあります。今回は商業農場で利用されているデカップルシステムについて解説していきます。

目次

デカップルシステムと養液土耕のアクアポニックス

シングルループのアクアポニックス

まずデカップルシステムについてお話しする前に、シングルループのアクアポニックスについて解説します。

シングルループシステムは従来通りの水が循環しているアクアポニックスを指します。水槽とフィルター、野菜の栽培槽が一つにつながり、水が循環する栽培システムです。1つのシステムで環境にやさしく魚と野菜の両方を育てられるのが特徴です。家庭用や商業用のアクアポニックスで広く利用されているのが、このシングルループのタイプです。

シングルループの利点

シングルループシステムの利点は次の通りです。

  • 構造がシンプルであるため作りやすい

シングルループシステムでは水槽とフィルター、栽培槽を配管でつなぎ、水を循環させれば稼働します。複雑な水の経路を作る必要がなく、小型化も可能です。

  • 栽培管理がしやすい

シングルループシステムでは水槽やフィルター、栽培槽の水質が一定になり、1か所の水質検査で全体を把握できます。また、魚の餌を増やせば野菜の栄養が増え、餌を減らせば栄養も減らせるので、水質の状態のコントロールもしやすいです。

  • 繰り返し水をリサイクルできる

この後紹介するデカップルシステムや養液土耕のアクアポニックスでは、管理の方法によっては水をリサイクルしません。シングルループは同じ水を再利用し続けるので、水の消費量を抑えられます。

シングルループの課題

一方シングルループのアクアポニックスにも課題があります。

  • 水質がシステム全体で同じになる

シングルループシステムでは水槽、フィルター、栽培槽の水質が一定になる、つまり魚と野菜、微生物は同じ環境に置かれます。それぞれの全体最適で水質を考えていくと、水温20~30℃、PH7前後の環境にあった魚と野菜の種類を選択する必要があります。シングルループでは魚、野菜、微生物のそれぞれに最適な環境で栽培管理ができません。

  • 病害虫への対応

シングルループのアクアポニックスでは魚に有害となる農薬は使用できません。そのため物理的な防除や魚に害のない農薬に使用を限定されてしまいます。

  • トラブル発生時の影響

シングルループでは魚と野菜のどちらか一方にトラブルがあった場合に、全体に影響が出る可能性があります。例えば魚が病気になり、薬の投与は魚にとって病気を治すのに有効な手段でも、微生物や植物には害があるかもしれません。シングルループは水槽、フィルター、栽培槽を分離できないため、部分的な問題に対応できない場合があるのです。

デカップルシステム(ダブルループシステム)

ダブルループシステムはシングルループの課題を解決したアクアポニックスになっています。ダブルループシステムでは通常時、水槽とフィルタ―の養殖エリアと、栽培槽側の水耕エリアで水の循環が分けられています。養殖側は時間が経つにつれ、徐々に水中の栄養素が多くなり、水耕エリア側は逆に徐々に栄養素が減っていきます。ダブルループシステムでは定期的に養殖側の水を水耕パートに移して野菜に栄養を供給し、野菜が浄化した水は養殖側に戻して水をリサイクルします。

デカップルシステムのメリット

ではダブルループシステムにどのような利点があるでしょうか。

  • 魚と野菜のそれぞれの環境づくりができる

ダブルループシステムでは養殖エリアと水耕エリアを分離しているため、水温やPHを別に管理できます。そのため、野菜の成長に合わせた環境や低水温の魚に合わせた環境づくりが可能になります。

  • 農薬や魚の治療薬が使用できる

シングルループでは使えなかった農薬や魚の治療薬が使用できるようになります。薬によっては水のリサイクルができなくなりますが、既存の農薬を利用できるようになれば、病害虫対策がしやすくなり、魚が病気になった際にも、野菜に魚の治療薬が影響しません。

  • トラブルが起きた際に対応しやすい

養殖エリアと水耕エリアのどちらかで機材トラブルなどがあった場合に、シングルループではシステム全体が止まってしまいますが、ダブルループシステムではどちらか一方に影響の範囲を限定できます。

デカップルシステムの課題

  • 初期設備投資が大きくなる

シングルループのアクアポニックスに比べて設備が増えるため、デカップルシステムの初期投資は大きくなります。

  • 管理が複雑になる

シングルループのアクアポニックスでは1か所での水質管理で全体を把握できましたが、デカップルシステムでは養殖エリアと水耕エリアが分離しているため、それぞれの状態を把握しなければいけません。水質の状態に応じて養殖エリアから水耕エリアに水を移動させるなどシングルループよりも複雑な管理が必要となります。

まとめ

デカップルシステムはシングルループよりも複雑な栽培設備になりますが、魚と野菜、微生物にそれぞれ最適な水質を作れます。また養殖エリアと水耕エリアを分離できるため農薬の使用や化学肥料の使用も運用次第では可能です。初期投資が大きくなり、やや複雑な運用にはなりますが、より生産性を高めたい場合にはデカップルシステムを検討してみてください。

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