魚を水槽で飼育していると水に藻が増えて透明ではなくなり、グリーンウォーターになってしまった経験はないでしょうか。アクアポニックスでは水の中の栄養が豊富な状態を作り出すため、光が当たるとあっという間に藻が発生してしまいます。今回は藻の発生による問題と対策を紹介します。
アクアポニックスで藻が発生する問題と対策
ほぼすべてのアクアポニックスで問題になる
藻はほぼすべてのアクアポニックスで発生する可能性を持っています。藻が発生する原因は2つあります。
- 成長に必要な栄養がある
- 適切な日射量がある
アクアポニックスでは野菜を育てるために水を栄養豊富な状態にしているため、その養液に光が当たると必然的に藻が発生してしまうのです。家庭用のキットは魚を観察できるようガラス水槽など透明な容器が利用されるため、多くのキットで藻が発生しやすい環境になっています。大規模なアクアポニックス設備では水に光が当たらないように様々な工夫を施しますが、対策が不十分だと藻が発生します。
藻によって発生する問題
ではアクアポニックスで藻が発生するとどのような問題が生じるのでしょうか。
- 溶存酸素を低下させる
藻は日中光合成によって酸素を発生させますが、夜間光が当たらなくなると酸素の生成をやめ、逆に酸素を消費します。つまり藻が大量に発生している水槽では、夜間の溶存酸素濃度を大きく下げてしまう危険性があるのです。酸素が枯渇すると魚はストレスを感じ、死んでしまうことも。野菜も夜間に酸素呼吸ができなければ、根腐れや栄養吸収に影響がでるため生育不良や硝化細菌の効率低下で水質悪化を引き起こす恐れがあります。
- PHを乱高下させる
水中のPHは炭酸イオンによって変動します。藻が大量発生した水槽では光合成をする日中は炭酸イオンが消費されPHが上昇し、酸素呼吸を行う夜間は炭酸イオンが増えPHが低下します。環境によってはPHが1~2程上下するため、検査の時間によってPHが変化してしまいます。PHの乱高下は魚にとってストレスになり、PHの上昇は植物の栄養吸収が悪くなるため成長の阻害につながります。
- 水槽の見た目を悪くする
藻が大量に発生した水槽は魚の観察にとっても悪影響です。アクアポニックスにおいて魚の体調はシステム全体の健全性を維持するための重要な要素です。体調が悪い魚がいても藻が生えていては発見が困難です。またインテリア用のアクアポニックスでは景観が悪くなり、魚を見て楽しめなくなってしまいます。
- 植物に与えたい栄養が藻に吸収されてしまう
アクアポニックスは植物を育てることも目的の一つ。藻が発生すると植物に与えたい栄養が藻に吸収されてしまい、植物に必要な栄養が不足する可能性があります。
- フィルターや配管を詰まらせてしまう
アクアポニックスは水槽、フィルター、栽培槽が配管で連結され、水が循環しています。どこか一か所で藻が発生すると栽培システム全体に行き渡るため、フィルターの構造によってはフィルターに藻が溜まり水の流れを阻害し、場合によっては詰まることも。流量の低下や配管の詰まりは別の問題を引き起こすため注意しましょう。
藻の発生を防ぐ対策4選
では藻が発生しないようにするにはどうしたらいいのでしょう。アクアポニックスでは次の対策が有効です。
徹底的に遮光する
藻の対策で一番効果が高く、すぐにできるのは遮光です。藻が発生する条件の一つが光なので、水に光が当たらないように対策しましょう。家庭用のキットではガラス水槽を利用している場合が多いため、完全に遮光するのは難しいですが、直射日光が当たらない場所に設置するだけでも効果があります。中~大規模の設備では寒冷紗などの遮光ネットで光を遮断できます。IBCタンクなど光を通すタンクを利用している場合は外側の塗装も有効です。プラスチックは紫外線によって劣化するため、寿命を延長にもつながります。メディアベッドのメディア(培地)に藻が生えてしまう場合は、メディアを追加し水を覆うと藻の発生を防げます。藻の発生が確認されたらまずは遮光して、藻の増殖を防ぐようにしましょう。
物理フィルターで除去する
どうしても藻が発生してしまう場合は、物理ろ過フィルターでキャッチして除去する方法があります。目の細かいフィルターが藻の栽培槽への侵入、栽培システム全体への蔓延を防いでくれます。ただし、フィルターが完全に詰まらないように定期的なメンテナンスが必要です。
紫外線殺菌装置を利用する
紫外線殺菌装置で養液にUVを当てると、養液に含まれる藻の胞子を殺菌し増殖を防いでくれます。ただし、微生物の増殖や微量元素の減少のリスクもあるため使い方には要注意です。
水に色をつける
海藻エキスなど水に溶かすと暗く色づけてくれる資材も有効です。暗く色づいた水は、藻に必要な光を阻害できるため藻の増殖を防いでくれます。また海藻エキスは野菜の成長に必要なミネラルだけでなくアミノ酸等も含んでおり、野菜の味を良くしてくれる効果も期待できます。家庭用のキットでは水の色が気になる場合この方法はあまりオススメできませんが、非常に有効な対策です。
まとめ
アクアポニックスに藻が発生すると栽培システムのバランスが崩され、魚、野菜、微生物に大きな影響を与えます。藻は適切に対策すれば確実に防げます。また藻が発生した後でもよく観察し、発生元を特定すればすぐに対処が可能です。藻を増やさない設備構成と発生しても放置せず確実に対処するようにしましょう。
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