アクアポニックスではメディアベッド内の水位を自動的に上下させるベルサイフォン(オートサイフォンのひとつ)が利用されています。自然の物理法則を利用しているため、電源や機械を使用せず水位を変化させる仕組みです。
アクアポニックスに絶対に必要というわけではありませんが、ベルサイフォンは微生物や野菜に良い影響を与えてくれます。ではなぜベルサイフォンを使うのか、サイフォンの仕組みとアクアポニックスに使う理由を今回は紹介していきます。
オートサイフォンをアクアポニックスに使う理由
サイフォンについて
そもそもサイフォンって何?と思われるかもしれませんので、サイフォンの原理について解説します。
サイフォンの原理とは高い位置にある液体を低い位置にホースなどの管でつないで流す際、管内が液体で満たされていると、管の途中に高い地点があってもポンプでくみ上げることなく流れ続ける原理のことです。
灯油ポンプなどでも同じ原理が利用されています。その逆に低い位置を液体が通って水が運ばれる仕組を逆サイフォンと言います。石川県金沢市にある兼六園の噴水はこの原理が使われています。
では実際にサイフォンで水が移動する様子を見てみましょう。
ベルサイフォン(オートサイフォンの仕組み)
ベルサイフォンはサイフォン原理が働いたり、止まったりすることでコンテナ内の水位をを上下させる方法です。
ベルサイフォンはこの図のようにオーバーフロー管を覆うようにサイフォン管を被せてつくります。このサイフォン管の内部が水で満たされるとサイフォンの原理が働き、コンテナ内の水が全て吐き出されます。水がなくなり、サイフォン管の中に空気が入り込むとサイフォンが止まり、またコンテナに水が溜まっていきます。
ポンプを利用することなく自然の原理を利用して水位を上下させることができるのがベルサイフォンです。
アクアポニックスでベルサイフォンを使う理由
ベルサイフォンが利用されるのは上の写真のようなメディアベッド方式の栽培方法です。
ベルサイフォンを使わずにオーバーフローで水を循環させる方法では、水位は右の図のように常に一定になります。そのため、植物の根は水に絶えず浸かってしまい、酸素が根に届きにくくなります。植物の根は水や栄養を吸収するだけでなく、酸素も取り込んでいます。
もし根から酸素を取り込めないと「湿害」と呼ばれる現象が生じます。根腐れや植物が枯れる現象です。水がうまく循環していれば酸素はなくなりませんが、水温やアクアポニックスの環境によっては水中の酸素濃度が低くなります。
ではベルサイフォンを使うとどうなるでしょうか。
メディアベッドにベルサイフォンを取付けると水位が上下しますので強制的に根に酸素が送られるようになります。植物によっては根域の酸素濃度が上がると成長がよくなり、収量が多くなることが確認されています。単純に酸素が根に供給されるだけでなく、植物の成長が促進されるというメリットがあります。
また、メディアにも酸素が多く供給されるため、好気性細菌である硝化細菌のはたらきをよくする効果も期待できます。
こうした理由からアクアポニックスではベルサイフォンが利用されています。
よくあるトラブル
サイフォンが働かない
サイフォン管を取付けてもうまくサイフォンの原理が働かない場合があります。
サイフォンが働かない原因として、給水量が少なくオーバーフロー管から流れる水と釣り合ってしまうことやサイフォン管とオーバーフロー管の間にある空気が抜けていないことが挙げられます。給水量を増やす、またはオーバーフロー管とサイフォン管の間を狭くすると空気が抜けやすくなりサイフォンの原理が働くようになるでしょう。
サイフォンが止まらない
次にサイフォンが止まらない場合です。
ベルサイフォンを実際に作ってみるとサイフォンの原理が止まらなくなることがあります。原因は給水量と排水量が釣り合ってしまい、サイフォン管の中に空気がうまく取り込まれないためです。対策としては給水量を調節して少なくするか、排水量を増やすために排水管の径を大きくすると改善できるでしょう。このようにベルサイフォンは給水と排水のバランスも大事な要素です。
排水の勢いが悪くなる
ベルサイフォンを運用していると排水が悪くなることがあります。
野菜の根や葉、ゴミが配管に引っかかり詰まると、排水が悪くなりサイフォンの原理が働きにくくなります。点検も兼ねて定期的にサイフォン管をあけて掃除しましょう。掃除定期的なメンテナンスはトラブルを防いでくれます。
メディアベッドにはベルサイフォンをつけよう!
ベルサイフォンには野菜にも微生物にも良い影響があることを解説してきました。自分のアクアポニックスのサイズに合わせて調整して作ることで、よりサイフォンへの理解が深くなります。DIYでの作成も難しくないため、メディアベッドを自作される際にはベルサイフォンづくりにもチャレンジしてみてください!
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