アクアポニックスは一度設備を設置してしまうと移設や改良が難しくなります。特に中~大規模のアクアポニックスの場合は運転を開始してしまうと大規模な変更は困難です。今回はアクアポニックスを始める前に知っておきたい6つのことを紹介していきます。
アクアポニックスを始める前に知っておきたい6つのこと
アクアポニックスを設置する前に次の6つのポイントについて考える必要があります。
- 設置場所
- 魚と野菜、微生物の相性
- 育てる野菜の種類と量
- 育てる魚の種類
- 栽培方法
- 魚と野菜のバランス
では1つずつ見ていきましょう。
設置場所
アクアポニックスの設置場所は次の4つがポイントとなります。
- 電源が近くにあるか
- 水は確保できるか
- 水平な地面は確保できるか
- 太陽光はあるか
①電源が近くにあるか
アクアポニックスは水を循環させるためにポンプを利用します。常に電気を利用することから電源が必須です。また、ポンプ以外にも養液を温めるヒーターやエアレーション、モニタリングシステムにも電気を使います。太陽光パネルと蓄電池を利用しての稼働も可能ではありますが、曇りや雨が続くと発電量が少なくなり電気が不足することがあります。アクアポニックスでは24時間常にポンプを稼働させるため、太陽光を利用する場合にも電源を確保しておくと安全です。
②水は確保できるか
アクアポニックスは水の使用量が少ない農法ですが、水は大量に使用します。また、水の自然蒸発や植物の吸収、蒸散によって、常に水は減り続けます。水源が確保できれば自動給水も可能であり、日常管理も簡易になることからも水が補充しやすいかどうかはアクアポニックスの運用においては非常に大切なポイントです。
③水平な地面は確保できるか
アクアポニックスでは水槽、栽培槽には常に水が張られ、流れています。地面に勾配があると水槽を設置した際に水面が傾き、栽培槽の水の流れが思うように作れないため、勾配を調整する必要があります。設備で微調整も可能ではありますが、水平が取れている地面への設置のほうが簡単です。これは室内で小型のアクアポニックスを設置するときも同じです。
④太陽光は確保できるか
野菜が育つためには光合成をするための太陽光が必要です。アクアポニックスを設置する場所は十分に光を取り込める場所でしょうか。屋外でも建物の陰になりやすい場所や、地形的に日照時間が短い場所があります。特に室内にアクアポニックスを設置する場合には、太陽光が不足する場合が多くあります。設置しようと思っている場所の日当たりは事前に確認するようにしましょう。もしどうしても日当たりが悪い場所に置く必要があれば、植物用のLEDライトで太陽光を補うことも可能です。
魚、野菜、微生物の相性
アクアポニックスの中でプレーヤーとなる魚、野菜、微生物にはそれぞれ生育に適した水温があります。この三者の適正水温が重なる温度帯で管理するとアクアポニックスは成功しやすくなります。上の図で確認すると20℃~25℃の範囲が重なる部分が多いです。つまりこの水温を好む魚と野菜を選ぶことが成功への第一歩です。一方で冷たい水に住む魚はアクアポニックスでは飼育できないかというと、必ずしも飼育できないわけではありません。ただし、様々な工夫や管理にエネルギーが必要となるため、初心者の方にはあまり向きません。
育てる野菜の種類と量
野菜の種類、育てる量を決めることはアクアポニックス全体のバランスを決めていくうえで大切なポイントです。葉物野菜やハーブ、トマトなど実物野菜に果樹、根菜など、アクアポニックスでは様々な野菜を育てられますが、野菜の種類や特性によって栽培槽の形状に向き不向きが生じてきます。どういった野菜を育てたいか初めに決めることでより栽培に適した栽培槽を選択できるようになるでしょう。また植える野菜の量も大切です。野菜の量は栽培槽の大きさを決めるだけでなく、魚の飼育量を決めることになります。野菜の肥料は魚の排泄物が原料で、育てる野菜の量が増えれば必要な肥料の量も多くなります。肥料を増やすためには魚への給餌量を増やさないといけませんが、魚が食べられるエサの量は限られています。つまり野菜を育てる量を決めなければ、育てる必要がある魚の量が決まりません。野菜の種類を決める時点で、育てたい量も決めるようにしましょう。
育てる魚の種類
魚を選ぶ際のポイントはいくつかあります。
- 観賞魚or食用魚
- 適正水温
- 大きさ
- 飼育難易度
- 繁殖できるかどうか
- PH
魚、野菜、微生物の相性でも説明しましたが、アクアポニックスが成功しやすい温度帯の魚が初心者の方にはおすすめです。
栽培方法
アクアポニックスの代表的な栽培方法は3種類あります。育てる野菜や設置環境に合わせて栽培方法を選択します。
①メディアベッド
メディアベッドはメディア(培地)を利用したアクアポニックスシステムです。メディアが野菜を支える土台や物理ろ過、生物ろ過を兼ね備えており、育てられる野菜も幅広いです。必要な設備が少なく小~中規模のアクアポニックスに向いている栽培方式です。家庭用キットとして販売されているアクアポニックスに多く利用されています。
②DWC(Deep Water Culture)
DWCは中~大規模な農場に適した栽培方法です。水深が20~30センチ程の水槽に発泡スチロールなど水に浮くラフトに野菜を植えて育てます。設備全体の水量が大きくなるため水質が安定しやすく、多くのアクアポニックス農場で採用されています。トマトなど実物野菜を育てることもできます。
③NFT(Nutrient Film Technique)
NFTも中~大規模施設でよく利用されている栽培方法です。緩い傾斜をつけた筒の中に薄く水を流して野菜を育てます。野菜の根に酸素が触れやすいことから成長もしやすく、使用する水量も少なくなるため高設化しやすいのが特徴です。根が広がる空間が狭いため1~2カ月ほどで収穫する野菜に向いています。
魚と野菜のバランス
アクアポニックスでは魚と野菜のバランスを「飼料比率」で考えていきます。大きく分けて葉物野菜と実物野菜で飼料比率は異なり、野菜を植える際1㎡あたりにどれくらいの魚のエサを投入する必要があるかの目安となります。例えば、葉物野菜では1㎡の栽培面積当たりに必要な魚のエサの量は20~50g/日、トマトなど実物野菜の場合には50~80g/日となります。エサの投入量がわかると魚の飼育量が計算で導き出せるようになります。
始める前にしっかり計画しよう!
アクアポニックスは始めてしまうと変更が難しいため、始める前の計画が非常に大切です。今回ご紹介したポイントをよく検討したうえでアクアポニックスを始めるようにしましょう!
駐車場1台分のスペースから始められる”まちかどアクアポニックス”
アクアポニックスを自宅で始めたい、兼業農業を始めたい、新規事業として取り組みたい、教育にアクアポニックス取り入れたい、自給自足にー。
まちかどアクアポニックスは駐車場1台分、わずか10㎡の広さで野菜を1000株、魚を200匹飼育できる省スペース高効率栽培が可能なトータルシステムです。温室、水槽、栽培槽、フィルター、環境モニタリングシステムがオールインワンとなっています。
葉物野菜やハーブ、実をつける野菜など育てられる野菜は無数にあり、多品目の栽培も可能です。
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